ミニケーススタディ あなたが店長だったらどうする??
これは意思決定の問題、そう、相反する考えを吟味してどう方針を決定し対処するかの問題。
http://www.j-cast.com/2009/08/17047609.html
注目すべき抽出条件として、
- ヨーロッパから一時帰国中の友だちがおみやげに持ってきたデザートワイン
- 店内には、よしもとさんらしかおらず、あと2時間で閉店だったという。
- よしもとさんらにも「困る」と説教をし始めた。
- いくらかお金も支払うと説明したが、店長は一度許すときりがないと受け付けなかった
- 都会のチェーン店
賛否両論がネット上にあり、示しがつかないからきっちりするべき、だという意見や接客としてまずい、柔軟に対処すべきだという意見までさまざま。どれもそれぞれ一理ある。客も客で非常識だし、店も融通きかせろよとも思う。
しかしながら、ここには前提条件が欠けている。
どの立場からどう判断すべきかという点で論じる人の想定がばらばらなのである。ここでまた議論は混乱して結構なケースとなる。
実は、この問題は単に店長の立場でどう判断するかという命題では根本的な解決にはならないのだ。
さて、経営者の立場、店長の立場、答えを出すとすればそれぞれで違うだろう。
MBAのクラスだったなら「店長だったら?」といわれてもついつい経営者の立場で考えてしまうところがこのケースの落とし穴。
経営者は、総合的に店の業績を上げて収益を上げるのが任務である。
しかし、店長として、それもとりわけ雇われ店長であれば、まずはそういう経営判断よりも現場の規律を守り、与えられた職責を全うするほうが優先する。その店長がどこまで権限をもちどこまで責任を持つかが明確でない限り安易に結論を出すのは感情論で終わってしまい、経営学的思考からは程遠くなる。
この店長氏も、もし経営判断まで権限委譲されていれば経営者の立場で総合的な判断ができたのだろうが、それが悲しいかな日本は曖昧。良かれと思って判断しても後で上から叱責されて評価が下がるという、雇われ人としては最大のリスクに対して業績向上によるインセンティブは最小限という非常に不利な状況に立たされるわけである。
であるから、この店長が雇われの店長である限り、客の前で部下を叱責するのがまずいということはおいておいて、一律に事前の相談なしの持ち込みを拒否するのは当然の行動である。
店長がどのようなポジションか見極めずにあれこれ文句を言うよしもとばななのほうがむしろ配慮が無く、自分は客だ、不快だった、影響力を甘く見るなの傲慢さが現れている。もし、お客の気持ちを察するに長けている店長ならおそらく断るのも心苦しいが職責を全うするために葛藤の上でそう行動したかもしれない。苦渋の果ての行動は経営的にはまずくても職責的には正しいことかもしれない。なにせこの日本という国は深夜でクルマも通らない横断歩道でも律儀に信号を守る歩行者が賞賛される国なのだ。
もし、店のルールの例外を認める権限委譲されていれば、他の客に影響もなく示しがつかないということもない、野放図な持込を許さないで店長としてそういう事象を管理するという体制を保つ目的もさることながら、雰囲気を壊さず客も不快にさせず、スマートに例外を認めることができただろう。どうせ自社では提供できないワインなのだし、持ち込み料金まで払うといっていただけるのだ、仕入れコストゼロで利益だけもらえるおいしい話。だけどその価格設定をどうしていいのかの判断などどうできるのだろうか? 現実の現場にはそういう細かい意思決定がいくつも要求され、後になってから逐一評価の対象になる。意地悪な経営者なら良くても悪くても悪いネタとして店長を苛めることも大いに考えられる。
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結論として一番悪かったのはばななでも店長でもなく、適切な権限委譲やマニュアルを整備しなかった店のオーナーや経営者にあると私は思う。
実は接客というロジックを超えた個人的感情を相手にする仕事ではこういうケースが多々と存在する。
それに対処するために最大限の権限委譲をしている成功例としてしばしば取り上げられるのがリッツ・カールトンである。
クレドという基本方針には一人の人間としてベストの対応をすればよいと従業員に全幅の信頼をおいている。
しかし、それを徹底させるには、逆に従業員の質を高めて決して非常識な行動や判断をしない人ばかりであるという前提がないと成り立たない。
飲食などでも、アルバイト中心でろくな教育もできない、またしようとしても徹底できず入れ替わりが激しい、となると絵に描いた餅である。質を確保しようとしたら待遇も福利厚生も同業者比で優位に立たないとすぐに逃げられてしまう。気がつくと中国人アルバイトばっかりという状況に陥るのが現実の飲食業だ。かといって現実の数字は人件費のコストダウンが業績に直結する。実際に中途半端に教育も徹底できず待遇は良くないと人は集まらないという現実に振り回されている。下手をすると前出の居酒屋も変な前例を作ったら店長の目を盗んで勝手に仲間内で持ち込みを許すような程度のアルバイトだったのかもしれない。このケーススタディはそこまで考える必要がある。
テレビや講演でおなじみの有名な名女将ですら現場ではその立場の違いを思いやれず、仲居にぶつくさ当り散らしては、やっぱりダメだ任せられないとかいってなんでも背負い込んでいたし全部自分が接客しないと不安でならなかった。
適切なインセンティブや処遇、優秀な判断ができる人材の確保、権限委譲ができないと必然的にそうなってくる。若いうちはまだいいが誰しも年をとる、体力にも限界があるし組織も拡大できない。「うちは企業でなくて家業でいい」と嘯くのが関の山。
だがそれは企業経営者の態度ではない、おのずから成長にも限界があるだろうし、客を見ずに女将の顔色ばかり伺うような仲居だらけになるのも必然である。恥ずかしながら自分もMBAをとるまではそういうジレンマに陥っても抜け出せなかっただろう。
飲食とはなんとも悩ましい業種だろうか!