山田六郎 weblog

大阪名物くいだおれ幻の三代目にして経営/観光/広報コンサルタント山田六郎が実名で執筆する有責任ブログ
経営学や観光振興についての諸問題が一応テーマですが、身辺雑記、論理的哲学的思考からみた世の中の矛盾についても書いてます。

ペッパーランチに見るクライシスマネジメント

2009/09/09 水 | 研究 > 経営学

ここ数日、ペッパーランチの食中毒について報道がなされている。
社長のブログも炎上しているらしいし、2ちゃんでも祭り状態。

店員が女性客を監禁してレイプした前代未聞の事件が起こった過去がある会社、普通ならばこういうとんでもない事件が起きた場合、以後にはそれなりの対処をする体制を構築するのが普通だ。
当時だって大祭りになっていた、加害者の一人が某在日外国人団体の幹部の息子だったから大きく報道されなかったのだとか怪しい情報も飛び交っていた。

だが、ここの社長はそれをしなかった。経歴をみれば料理人出身でいきなりビジネスプラン出して資金集めて急拡大したみたい。ひょっとして経営についてあまり良く分かっていないのかもしれない。こういうときの対応こそが命取りということが。

食中毒が同時多発でおこって、記者会見ともなるともうてぐすね引いてメディアは叩いてやろうとやってくる。これをいかに逆手にとって味方につけるかが腕の見せ所?だけどしない。
「うちのものかどうかまだわからない」なんて、私は寝ていないんだレベルの下手な対応。

教科書的には、
1謝罪表明
2現状の経緯説明
3判明している限りでの原因説明
4今後の再発防止策
5責任表明 被害者への損害賠償
6その後事実判明のたびの発表次第

とここぐらいは押さえておかないといけない。
日本のメディアは何にしてもヒステリックに感情的煽動がしたくてたまらない。押尾やのりPだってそう。その段階で風評被害や印象を和らげるためにも、非がなくてもとりあえず「お騒がせした」というだけのことであっても謝罪しておく。これが大事。
やらないと祭りになる。みのもんたに根も葉もないことで叩かれた不二家のみたいな非道なことされてしまう。たとえ事実無根でもぜんぜん平気なのがマスメディア、いくらこちらが正しくてもダメージは大きい。
原因が分かるまで全チェーンとりあえず営業停止してみるぐらいは必要だったかもしません。その際は徹底的に各店舗お掃除します。
(これらはくいだおれ時代の経験から、肝心なときにおろおろと取り乱す某有名女将とちがって、社長は頼もしかったね)

今日にも、ステーキのどんがまたO157で食中毒らしい、ペッパーランチに続いての印象はどうなるだろうか?
組織が大きくなり、知名度が上がれば上がるほど、こういった不祥事のダメージは大きい。

普段から信頼できるPR会社と顧問契約を結び、謝罪記者会見のトレーニングを経営トップは受けるべきだろう。
これもおじきの仕方とかリリースの出し方とか、想定問答集つくっておくとか結構ノウハウがいる仕事。
ちなみに、私もそのトレーニング指導の業務も承っております。
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尊敬する大学教授

2009/09/10 木 | 雑文 > 近況

今日、ある仕事で前回の大阪市長選挙に出馬した、尊敬する学者さんと同席し、ちょっとだけお話することができた。

もう大阪研究の第一人者で、いろいろひっぱりだこの人気者。

だけど、なんとなく雰囲気でだが、フィーリングというか生まれもっての性格というかが、自分と共通するものを持った人だなと感じた。

私もがんばろう。
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キャバクラで労働争議

2009/09/11 金 | 研究 > 経営学

私とはまったく正反対の思想、
憲法9条守れっていうウェブサイト 「マガジン9」
なんか最近はずっと9条を超越してサヨク関係なんでもありの話題を展開中、雨宮処凛がプロレカリアートの関係の連載してる。
もはや憲法9条についてのサイトかどうかも疑わしい。

とはいえ、今週は面白い記事があったのでぜひとも紹介したい。
http://www.magazine9.jp/karin/090909/

さて、本題。前回ちらっと告知したように、選挙翌日、私はフリーター労組の「争議」に参加した。なんと、みんなで都内某所の営業中のキャバクラに「突入」したのだ!
 ことの発端は今年の5月。フリーター労組に一人の女の子からの相談があったことだという。
彼女はキャバクラで働いていたものの、店長の酷いセクハラに苦しめられてきた。それだけでなく、その店には様々な問題があった。
深夜残業代の未払いや、遅刻や欠勤に対する高額な罰金。なんと当日欠勤で5万円とか、そんな滅茶苦茶法外な罰金がかせられているというのだ。

「キャバクラの争議だからコスプレだよ」と騙され、化粧してきてしまった男子が一名。

 10年前、私もキャバクラで働いていた。
そしてその店にも当然のようにキャバクラ独自の「メチャクチャ高額な罰金」システムがあった。
それは「遅刻一時間5000円」「無断欠勤1万5000円」「当日欠勤(カゼひいて休むとか)1万円」というものだった。
で、キャバクラで働く女の子の多くは、こういった「罰金」が違法行為だということなど知らない。
よって堂々と罰金が給料から引かれ、一緒に働いていた女の子(遅刻、無断欠勤の常習犯ではあった)なんかはなんと給料が「マイナス」になるという転倒まで起きていた。
それから10年。結局、この10年の間、誰もそのシステムを正面切って批判してこなかったからこそ(労組加入という形でなく、個人的に文句を言った子は多いと思われる)、罰金の額は10年で5倍にまで跳ね上がっていたのだ。
 で、フリーター労組のX氏に聞いたところ、この「罰金」というのは、労働基準法によってその上限が決められているのだという。
上限は日給の50%。月給の10%。しかも罰金を取るのであればそのことはちゃんと就業規則に明記しておかなければならず、その就業規則もちゃんと監督署とかに届けておかなくてはいけないという。
全国に一体どれほどのキャバクラがあるのか見当もつかないが、私は「就業規則のあるキャバクラ」など見たことも聞いたこともない。
そうして今日この瞬間も、全国のキャバクラで違法な罰金取り立てが行われているのである。
 さて、こんな違法だらけのキャバクラだが、問題なのは、世間の多くの人が「でも、どうせキャバクラでしょ? 」という形でスルーしてしまうことだ。そしてそこで働く多くの女の子たちも、「仕方ない」と諦めてしまう。が、今回、一人の女の子が立ち上がったのだ。

 そうして彼女はフリーター労組に加入し、団体交渉を進めてきた。
が、店側は誠実な対応をしなかったという。
よって、フリーター労組は労働委員会に不当労働行為の救済申し立てをし、その日の夜、団体交渉申入書を携えてみんなでキャバクラに向かったのだ。
 この日、会ったこともない女の子の応援のために集まった組合員は30人ほど。みんなそれぞれ忙しい中、立ち上がった「誰か」のために駆け付けた。
そうして打ち合わせののち、午後9時半過ぎ、私たちは営業中のキャバクラに「突入」!!お客さんとキャバ嬢が盛り上がるきらびやかな店に、突然場違いな貧乏人集団が乱入し、組合の若者が「団体交渉申入書」を読み上げる。
騒然とする店内。ビビるセクハラ店長。そして当事者の女の子は突然店の真ん中に走っていったかと思うと、「セクハラするな!」「給料払え!」と大演説をブチかまし始めた。
その姿は、異様にカッコよかった。なんだか泣きそうになった。
セクハラ加害者の店長がいる前で、そして同僚の女の子やお客さんがいる中で彼女が全身で怒りを表明する姿は何か神々しくて、だけど、どれほど勇気がいることだろう、と思った。
 さて、感動ばかりはしていられない。
私も店の奥まで入っていってキャバ嬢やお客さんたちにことの経緯が書かれたビラを配る。
ちなみにこの日はセクハラ店長の誕生日。
フリーター労組のX氏はなんと「バースデーケーキ」を持参。
突然店の中でケーキの箱を開けたかと思ったら、ろうそくを立てて火をつける。
そして組合員全員で唐突に「ハッピーバースデー」の大合唱!突然の展開に、店の酔っぱらいたちもワケのわからないまま全員で歌い始める。
キャバクラに轟く「ハッピーバースデー」。そうして歌い終えた瞬間、フリーター労組はケーキとともに団体交渉申入書を突きつけ、退散したのだった。
 何かここまでくると労働運動でもあり、集団芸術のようでもある。びっくりしただろーなー、セクハラ店長。
 それから私たちは近くで「集会」をした(ただ道端で喋っただけ)。
当事者の女の子は、なんだかスッキリした顔をしていた。
せっかくプレゼントしたケーキは返されてしまったので、組合事務所に戻ってみんなで食べようということになった。
 プレカリアート運動にかかわって、私は「人が立ち上がる瞬間」を何度も間近で目撃した。
これまで諦めて、泣き寝入りして、時には自分を責めて、そんな人々が自分の権利を知り、法律を知り、そして正当な怒りを表現する。
そんな瞬間、いつも鳥肌が立つくらい、感動する。
 全国の職場で違法行為をしている経営者の皆さん、あんまり勝手なことやってると、ある日突然貧乏人の集団が押し寄せてくるかもしれないので気をつけよう。
 ちなみに労働組合の争議はバッチリ合法なのでその辺よろしく。



高額な報酬に対し、女の子というか労働者というか の規律に対する意識が限りなく低い(とされる)お水系の業種。
上記のような法外な罰金やらなにやらは知っていたし、それがいわゆる「業界の常識」というのも知っていた。
しかし、コンプライアンスの面から言ってそれが法的に通用しないのは自明の理
飲食業についても中小零細で言えば、そのあたりの労働基準法やらの最低限の知識すら欠いている経営者や幹部が多いというのも、自分がその業界にいたからよく分かっている
こうやって労働争議という形に持ち込むのは、第三者的には痛快だし、もっとやったれよとも思う。
労働力もまた、経済学の原則が通用するのだ、他業種比、劣悪な労働条件しか提供できない業界は恒常的に熟練労働者不足に陥り、自然淘汰される。
サービス業は第一線の接客担当者もまた付加価値創造の原動力なのにコスト削減ばかり優先させた結果、気がつけば中国人アルバイトしかいないのはまさに自業自得。
安さばかり要求して安い店ばかりを求めていた消費者もまた、自業自得。
そもそも、なんでも安ければよい という価値観しか選択肢が残されていないというのは文化の衰退と思うし、さびしい。ウォルマート進出で荒廃したアメリカの数多くの田舎とか、大阪の下町でよく見る黄色の激安某スーパーとか。
新自由主義?も行き過ぎたら人格無視、精神文明の荒廃にもなりかねない。
真の豊かさとは幸福とは何か、よく分からなくなる。(またまた哲学的思索を始めたくなる。)

話は脱線したが、普通、賢い経営者ならこれらの女性を雇用する形とはしない。
そのあたり上手にかいくぐるための脱法行為として、女性それぞれを個人事業者として契約するのだ。(元祖偽装請負?)
だから銀座や北新地のホステスは確定申告をする。お店からの報酬はあくまでお店という場所を借りているだけで、自分たちはそれぞれ自前のアカウントで商売している。 店はそれについて金融を融通しているだけで独立している。とするのが常道だ。

実態がどうかというと限りなく怪しいのだが、それでも建前上はそういう形態をとる。その上で高額な報酬とペナルティであたかも自分自身が個人事業者という感覚にさせ、上手にインセンティブを与えてつかいこなす。

これを一般的な飲食業に置き換えてみても、やはり通じる部分はあると思うのだ。
単にアメとムチの話ではなく、いかに従業員に、自店を盛り上げる主体意識を持たせるか?やはり一人ひとりに経営に参画している、または自分が主体で営業をしているという自覚を持たせるか?の話。
それが業績を上げるように個々人の意識を変えさせるインセンティブとなり、良質なサービスに通じるのだ。
数字でわかる、出費を伴う待遇改善でなくても、役職呼称ひとつ、権限委譲ひとつでも違ってくる。お客からのお褒めのフィードバックだけでも俄然元気が出る。
だけどいつかは待遇改善に結びつけるような信頼がないとある日突然瓦解する。

みんな案外、目指すビジョンや経営方針、方向性について明確に共有できれば自主的に動くものだ、そして自分の工夫で店が盛り上がったり業績が良くなればうれしいし、悪くなれば悔しい。
だからカジュアルな飲食店の場合、結構若手の店長がサークル感覚でやってるようなことが、個々の接客や運営のスキルはたとえ劣悪だったとしても却ってそれが繁盛のポイントだったりする。

あくまでもオーナーシップにこだわり、従業員に権限委譲すらできずなんでも自分でやらなければ、重要なお客はすべて自分が相手しないと気がすまないようなタイプの人にはまずできない芸当だ。
そういうタイプの人はむしろ徹底的に自分個人のカラーを全面的に出して、自分一代で終わらせるビジネスとして割り切ったほうが良い。
自分ひとりだけの店で従業員はみんな自分を盛り立てる秘書といった感覚でちょうどいい。 バーのやり手ママやカリスマ女将としてなら成功だ。

そしてその姿は決して「経営者」としては立派ではないことを自覚するべきだろう。
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宿泊施設の相対的価値

2009/09/21 月 | 研究 > 観光学

SWというのに仕事の都合で一泊だけ、家族で白浜へ旅行に行って来た。
相変わらず阪和道は海南以南がずっと渋滞、片側一車線しかない、行楽時期は慢性的に混雑する、車線が半分なのに所要時間は二倍どころか十倍以上。なにか悪くなりだすと加速度的に悪影響がひろがるということか?

ところで、その日に泊まったのが一泊一万円の宿。
一万円といっても一人あたりではない、家族全員で一万円だ。
素泊まりなのだがYHよりも安い。ほとんどセルフサービスだがすいていた。なにせこの五連休の初日だというのに宿泊客が私の家族だけ。
地元紙によれば白浜の旅館組合の宿泊は最終日を除き加盟旅館すべて満席だというのにだ。宿帳を見ればこの夏休み7/19以降私たちで15組目。逆に安さ云々というよりも五連休の繁忙期でも泊まれるところがあってありがたかったというのが正直なところ。よそも当たったがすべて「満室」だった。
http://mahoroba8010.com/guesthouse2.html

そんなことでやっていけるのか?と思ったが施設は古いものの困るレベルではない。リネンにはマジックで東海BKとある。
ここは銀行の保養所だったところで、場所も海から遠いが丘の上、景色は良いが中途半端な場所にある。それが合併と資産リストラで介護付きの老人ホーム施設の用途に売却されるが部屋は余りまくり。
だから部屋だけは無駄に余っているから格安で貸せるのでこういうビジネスモデル(ビジネスとはいえないレベルだけど)になったということだ。
よく考えてみれば、食事もないからトータルで考えれば湯快リゾートみたいな破綻再生型の、最新のシステム運営でコストダウンした格安だがまともな宿泊施設と比べて数千円しか違わない。湯快は7800円で365日同一料金、朝食も夕食もついてというのはかなり魅力だ。
このご時勢に、というかこのご時勢だからこそ健闘しているし、実際繁盛している。

逆に私が泊まったこのような、余剰施設を使った片手間の激安宿泊施設も存在する。
サービスは一切なし、たまたま六畳で家族四人だが、これが六人、七人、と泊まったら一人当たりの料金はもっと安くなる。お風呂は古いがそこそこ大きく、天然温泉が引かれていて掛け流しだ。一週間泊まったら違いも大きい。毎朝毎夕バイキングも飽きるだろうし、かならずしも温泉地の全宿泊需要が一泊を基本とする従来の温泉旅館利用の形態とも限らないだろう。白浜なら夏休みに一週間ほど滞在して子供と海で毎日遊んだりのんびりできる。
少なくとも最低限泊まるという機能が、従来では考えられない価格で実現する施設が存在し、今後続々と増えることはあれ減ることはないだろう。

さて、である。そんな安物の宿があるからなんだというのだ、と思う旅館経営者も多いと思うが、ちょっと考えて欲しい。
何を考えて欲しいかというと、あなたの施設は宿泊客にどういう価値を提供して喜んでもらっているのか?ということをだ。

もし、他に泊まれるところがないから仕方なくと選択されているのであればコモディティ(市場でお金を出せばいくらでも手に入る、原材料といった一次産品)と同じだ、他と比べてましそうだからなんとなく、でリピーターも付かないのであれば、負け組入り決定ではないだろうか?

白浜という伝統的な温泉リゾート地であっても、いやそういうところだから企業の保養所くずれの施設がこれからもどんどんでてくるだろう。それらは天然温泉まで付いてとりあえず宿泊するという価値を提供している。
言い換えればただ泊まれさえすればよいという価値(満足度に見合った消費者が許容できる価格水準)は、高い温泉旅館やせいぜい民宿しか周囲にない時代にくらべてどんどん相対的に下がってくるのだ。
食事は外で済ませればよいのだから、低品質なつまらないサービス内容やお仕着せの食事内容での一泊二食付きを強制されることを不満に思い今まで仕方なく利用していたような客層は、金額に満足度が見合わない「余計な」サービスに無駄金を使うよりはとこういう宿泊機能だけを提供する激安ゲストハウスにかなりの数が流れるのではないだろうか?

では一方でその対極として限りなく高級化し、気の利いた仲居に高い人件費を投入してフルサービスを追及すればよいかといえば、それもブランド化に成功した一部の勝ち組のみがwiners take allとなるだろう。時間に余裕のある富裕層を中心に平日でも客足が絶えないそういう最高峰のサービス志向の旅館はひとつの温泉郷にひとつかふたつ、それ以外の施設は土曜日しか埋まらない過去とおなじ平凡な温泉旅館になるに違いない。
サービスにしろ料理にしろ、競合他社に打ち勝ってトップになるには並大抵の企業努力や体力では無理で、一工夫も二工夫も、業界の常識を覆す大胆な手法や戦略も取り入れ、前例の無い独自の価値を創造して顧客に提供していかないととうてい無理。
そして折角開発した前例の無い独自価値も、中途半端な小手先ノウハウに留まればすぐに真似されて相対的価値はどんどん下がっていく。後発の大資本の競合相手に、折角苦労して開発したノウハウだけ上手にパクられ再び体力競争にもって行かれる、いわゆるマネシタ電器されてしまうのが落ちである。
恒常的に常に最新最高のサービスを提供していく「企業体質」を仕組みとして構築しないと安心できないがこのご時勢だ。
安易に経営セミナーとかベンチマーキングでよそのノウハウをパクれば済むような世界ではないことだけは確かだ。なぜならば業界紙のみならず一般ビジネス誌で取り上げられるぐらい画期的な「成功の要因」"key success factor"でないと顧客はその価値を認めないからである。そしてそれを生み出す「企業体質」が備わらないと企業自体に対する顧客支持は得られない。パクっていいのは絶対圧倒的な資本をもったリーダー企業に限られる。だがこの業界にリーダー的存在の旅館は存在しないし(地域の温泉郷という地域の限定的な市場においては特にだ)、少なくとも個人経営のレベルではない。

また、安さと高品質をバランスさせればよいのか? 言うのは簡単だろうがそのバランスポイントが分からない。よその真似をするしか能が無い経営素人にはどだい無理な話である。
湯快リゾートみたいなオペレーションノウハウを個人経営の旅館で実現するのは難しい。 365日同じ料金でなんて、「そんなの旅館の商売じゃない」とかなんとか言って頭の古い院政しいてるような老人が反対するか、現場もろくに知らない若旦那(経営環境や顧客のニーズも冷静に判断できない)が中途半端な戦略やマーケティングのまま、周囲の意見も聞かずに暴走して、変に道楽に走っただけの形になって自滅するかだ。

営業業暦は長いが経営戦略の素人故に自己革新ができずに新興大手資本に食い散らかされるのがこの業界であり、これは日本料理の世界にもいえること。長年の経験でそのオペレーションの戦術ノウハウはすばらしいが、環境変化や顧客の要求の変化に対してきちんと対応して自ら戦略的に企業体質を変革できない。戦略転換には思い切りが必要だが、過去に引きずられてなかなかそれが大胆に変換できない。

激安ゲストハウスの登場でさらに宿泊機能の価値(満足度に見合った消費者が許容できる価格水準)が相対的に下落し、今後はさらにその傾向に拍車がかかってくるだろうというのが今回の旅行で感じたことだ。ここがあまり知られていないことが他の施設にとって幸いなだけかもしれない。サービスで差別化を図るにも、その図るべきサービスとは何か?自社が顧客に提供できる価値は何が強みで何が弱みか? これからの旅館経営者はさらに苦しい思索と決断を迫られるだろう。
きちんとわかった上で消費者行動まで予測して経営戦略をゼロから見直す、経営雑誌なども枝葉末節のノウハウをパクるのではなく、その経営者がどのような経緯と材料をもとにその決断に至ったのか?を重視して読む。いずれにせよ小手先の戦術ではなく、顧客提供価値の本質を深く吟味した上での戦略で勝負しないと旅館業界での生き残りは難しい。
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