「クレームゼロ憲章」の問題点

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いきなりステーキ社長、従業員に喝 「作業するだけで給料をもらえると思うのは大間違い」

いきなりステーキ社長、従業員に喝 「作業するだけで給料をもらえると思うのは大間違い」: J-CAST ニュース【全文表示】

経営難がいわれている、ペッパーフードサービス。もう末期症状のような情報が流れております。
こういった、サービス精神の提供を強調する経営者、飲食店に多いですね。
私も飲食業経験しましたが、労務管理や人事管理はいきあたりばったりで根拠も科学もなく、たたき上げだったりする経営者の感覚と根性論で報酬に見合わない労働を迫られるのが当たり前の業界であります。
さて、何が問題なのでしょうか?
社内報で従業員に自己改革、自己啓発を即し、成長を期するのは問題ありません。また接客サービスにあたるにあたっての心得や会社方針を示すことも合法です。
しかし、『店舗では作業するだけで給料をもらえると思うのは大間違いです。』はどうでしょう?
日本の労働基準法では、出来高払いであっても最低限の賃金を保障するルールになっております。
労働契約に基づいて労働の対価として報酬を支払うのは当然であり、またその契約内容には作業以外の何らかの義務が入っているのかどうかは不明ですが疑問です。
逆を言えば、作業をするだけの人に対して給料を払う義務が使用者にあります。
いきなりステーキの従業員さんは、労働条件通知書や就業規則の内容をいまひとつ確認し、会社から命じられた作業をしているのに他の理由で給与が減額されていないか注意したほうが良いと思います。
それよりももっと心配なのは「クレームゼロ憲章」です。
お客様に対して会社のサービスへの姿勢をアピールするのなら何の問題もありません。
しかし、この憲章は「再三にわたるクレームの当事者は、厳重な処分をします」と従業員への罰則をほのめかす内容が入っております。
労働者へ表彰及び制裁の定めをする場合においては、労働基準法89条の9号にて、就業規則にこれを定めることと義務付けられております。また社長が言うように給料もらえると思うのは大間違いというのであれば、それに違反する従業員は減給制裁ということになりますが、その場合でも91条に「一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と規定されていて、減給する額にも制限があります。
そもそも、その「クレームゼロ憲章」なるものは就業規則や労働協約の一部をなすものなのでしょうか?就業規則であれば労働基準監督署にそれを届け出る義務があります。「厳重な処分をします」とあるのですから違反者は制裁または解雇するということでしょうから、当然労働基準監督署にこれは届けられているべきですが、実際はどうなのでしょうか?
株式会社ペッパーフードサービスは3053と証券コードがある立派な上場企業ですので、コンプライアンス面も当然きちんとしなければなりません。上場の適格性が問われる事態です。

主に労務の視点から論じてきましたが、昨今の人手不足で苦しむ飲食業界において、このような違法かもしれない要求を従業員に求める経営者の会社は危険です。
人事・労務面でのコンプライアンス違反は労働集約型である飲食業にとってのアキレス腱。アルバイトが集まらずに営業できない事態もあり得る昨今には、昭和の時代のような雇ってやる使ってやる給料安いけど下積みなんだから当然だといった感覚の経営者は立ち行かなくなるでしょう。
厚生労働省からの各種助成金も、ほとんどが従業員の3~5%の賃上げなど待遇改善を条件としております。少子高齢化で雇ってやるから働いていただくへ社会環境が変化しておる昨今、人事考課や募集、キャリアプランなど労務関係の制度全般を総合的に見直す時期かと思います。



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